会長の”明日に架ける橋” その12

この橋は、歴史に名高いエドムンドペッタス橋という。場所はアメリカ南部のアラバマ州セルマ市にある。

1964年に成立した公民権法(黒人の権利を認めた法律)を巡り、黒人参政権を求めてモンゴメリー(州都)まで歩こうとしたデモ隊が、この橋で州兵と衝突した。これが全国的
な反響を呼んでいき解決に繋がっていく。その指導者の1人がキング牧師という英雄である。下記がI have a dreamで始まる彼の演説だ。
I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave-owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.
(私には夢がある。いつの日か、ジョージア州の赤い丘の上で、かつての奴隷の子達と、かつての奴隷の所有者達の子達が、兄弟愛というテーブルで席を共にできることを)
彼は、奴隷の子孫とその所有者の子孫との身分差をなくすことを強く訴えている。結局暗殺されてしまったが、その年が南北戦争奴隷解放がされてから100年後というのは、偶然の一致とは思えない。
 なお、私が歩いて橋を渡っていると、車の中から大きな声が飛んできた。幸いにも英語が理解できなかったが、明らかな罵声であった。身の危険を感じた瞬間であった

 アメリカの歴史を変えた橋

南部を旅行すると、アメリカの側面を理解することができる。長い歴史を変えるには時間がかかるようだ。そもそもヨーロッパからやってきた白人は、先住民(インディアン)を排除して植民地を作った。南部はアフリカから黒人奴隷を雇い、綿花栽培などのプランテーション(大規模農園)で膨大な利益を上げ
た。この間、黒人は奴隷であった。このようなスタイルを200年も続けた後、南北戦争(1865年)でリンカーン奴隷解放宣言を出し、平等宣言がなされた訳であるが。。。というよりも、ここから平等運動がスタートしたというのが歴史である。

実際に大規模農園を訪れてみると、その大きさに驚く。地主の家は入り口から遥か向こうにあり(300mくらいかな)、その両側には樫の大木が整然とあり、その影にレンガ作りの奴隷小屋が並んでいる。貧富の差が歴然としているが、その風景には圧倒される。ただ小屋を覗いてみると、予想していたよりは人間
らしい暮らしをしていたのではないかと思った。日本の民家のほうが、もっとミスボラシイ気がした。きっとアメリカの豊かさかもしれない。なお、この編の時代背景を知って、映画「風と共に去りぬ」を見ると、“何が正義なのか”考えさせられる。


公民権運動から既に50年が経っているが、まだまだ人種差別はある。やはり、白人(特にWASP:White Anglo-Saxon Protestant 米国社会の支配層)が中心という意識は未だにあるようだ。ただし、確実に時代は変化している。オバマ大統領の就任もその1ページである。