会長の ”東北震災地を訪ねて(後編)”   原発を行く 14

福島の“光”

写真は、福島県いわき市にある“スパリゾートハワイアンズ”である。今から50年ほど前の話だが、日本人が行ってみたい外国No.1が“ハワイ”ということに目をつけ、1966年「夢の島ハワイ」をイメージしたリゾート施設として誕生し、現在に至っている。

 

Oさんから、“震災・原発被害にもめげず頑張っている、スパリゾートハワイアンズのフラダンスを是非見て欲しい”と言われた。それ程までに、見る価値があるかと質問したが、
 “理屈じゃありません。とにかく見れば元気になります。”

とのことだった。この施設も地震で大規模破壊となり、直後に休館となった。さらに原発影響で一か月強“避難指示区域”に指定された。全面復旧までに1年を要すると言われた。しかし、ここからが素晴らしかった。
 “フラガール全国きずなキャラバン”と称し、ダンサーが全国を回った。“出張”である。これは、国民の胸を打った。国から表彰を受けたし、映画にもなった。“福島の心意気”である。そして、1年後、全面再開となった。
(写真は現在のハワイアンズ。観客も舞台に上がり楽しむ)
 
そんな元気なショーをみる予定だったが、注目されているせいか宿泊予約が取れない。満員御礼であった。仕方がないからビジネスホテルに宿泊し、ショーだけ見に行くことにした。
 ショーを含め、温泉・プール利用可能の入場費用は、18時過ぎても2,450円。
“結構高いな。”


 ところがラッキーなことに、50歳以上は1500円となっていた。
1,000円も安いのは有難いが、自分が正真正銘のオッサンだと、少し寂しい気持ちになった。

 ショーはタヒチアンダンスの群舞、ソロダンス、そして映画のテーマ曲「フラガール」で都合60分であった。この日も満員御礼。会社などの慰安会・家族連れ・カップルなど年齢層は広い。宿泊客はハワイ名物のアロハを着ている。御機嫌そうだ。

 正直、期待してなかったが、ダンスの質の高さ・一生懸命さに感動を覚えた。

活力ある福島を見ることができたことに安心したし、自分も元気をもらったような気がした。

これで福島編(原発を行く)を終わります。



プラス1 原発の想い出

 久しぶりにOさんとお会いし、当時の想い出を語り合った。県庁職員は震災から数か月、日常の仕事が終わると対策本部へ出向き、夜中まで仕事をし、翌日朝から通常の業務をこなしたらしい。特に“原発担当部隊”は過酷だったようだ。やはり、
“目に見えない危険との戦い”

これは、どれだけ大変なのかは当事者にしか理解できないと思った。

公務員は、行政がらみのトラブルがあると、住民から
 “税金で飯食ってんだから働け。” 
“何とかしろ”

と言われる。(申し訳ないが、私も言いたくなる。)特に今回の原発に関しては、“やり場のなり怒り”が公務員に向かったかもしれない。


 ところで、私にも原発の想い出がある。震災後の春休み(平日)に京都のホテルに宿泊したのだが、全室満員という盛況ぶりであった。ホテル関係者に尋ねると、東京方面の家族連れが、放射能影響を回避するために長期滞在”しているのだという。普段の時期なら十分に空室があるが、富裕層が全て抑えたらしい。そう言えば、宿泊者は如何にも金持ちの家族という印象だった。私は震災以前に予約したので宿泊できたが、通常のビジネスマンは仕事にならない事態だった。
 昔の諺に“風が吹けば、桶屋が儲かる”というのがあるが、これを捩って
“福島の原発で、京都ホテルが儲かる”

この話をOさんにすると、本元の福島も放射能影響は当然あることは理解していたが、そんな余裕はなかったと言った。

うーん。知っていても出来ないは、公務員の辛さかなと改めて思った。


まもなく、震災から3年となる。原発対応は、政府などの努力にも関わらず、未だ出口が見えない。福島漁業に至っては、試験的に漁に出るだけの休業状態である。風評被害もある。昨年の岩手県沖サンマ漁獲に関して、昔から水揚げの2大漁港は宮城の気仙沼と、福島の小名浜(おなはま)だが、なぜか小名浜のサンマは売れないらしい。わざわざ放射能検査してOK出荷を追加(気仙沼はしてない)しても、ブランド“福島”が邪魔をしているとのこと。
風評被害がなくなるのは、数十年、ひょっとしたら100年かかるのでは。。”

とOさんは語った。その理由として、茨城県で1999年に起こった“東海村JCO臨界事故”を例に挙げ、あの時じゃ、現場のちょっとした事故(レベル4)でさえ3年必要としたのだから、世界中から注目されている福島(レベル7)は、その何十倍も必要だろうと。

 風評は、じっと我慢して信用を回復させるしかない。


次回から宮城編を紹介します。