会長の”先生と呼ばれる日” その5

今回は最後の4科目「原価計算」である。なお、実際の1級簿記試験は、前半が「商業簿記会計学」の90分、後半は「工業簿記・原価計算」の90分である。この中で原価計算の問題は、実際の経営者(社長、店長)が考えるような問題である。ある意味、勉強しなくても理解力・センスがあれば正解が出せる設問もある。理系の人間には一番楽しい科目かもしれない。
 因みに右写真は、その道の大家である一橋大学の岡本 清先生の大作だ(860頁)。この本
は、私の宝物の1つである。(残念ながら読破はしていない)

原価計算
 前回のハンバーガーショップ“陸軍”の例を使って、原価計算の範疇を説明する。キーワードは損益分岐点(Break-even point)である。
  前回のデータを基に説明する。原価(90円)、売価(150円)、作った数(3000個)
全て予定通りであった。売上高は450,000円、利益は180,000円となった。
ここからが、店長の腕の見せどころとなる。

①“陸軍”は何個以上売れば利益がでるか?
答えは750個である。この値を損益分岐点という。(各自 頭を使って計算すること)
店長は、赤字にさせないため(給料が払えない!)最低750個/月は売ろうと頑張るわけである。
 原価の分類として、材料費・労務費・経費とは別に、比例費・固定費に分ける方法がある。
  比例費:品物を作るたびに発生する(材料費、労務費)
  固定費:品物とは関係なく発生する(建物代・広告費などの経費 上記では60,000円)
損益分岐点は、売れなくても発生してしまう固定費を、回収する目安となるものである。
②15時に作ると原価はいくらか?
答えは70円(材料費と労務費のみ)である。建
物代は月極めだし、広告代は一度に払ってしまう。そこで店長は考えた。売れない15時〜16時に80円のハンバーガーを売ろう。キャッチフレーズは
「昼のおやつに80円の激安バーガーを是非!」
これが当たり、激安バーガーは1000個/月売れた。この時の利益は10,000円である。

と、まあハッピーな話になれば良いが... 経営者は原価計算の知識を駆使してアイデアを出しながら店を運営するのだ。なお、この原価計算手法を使って考えた商売も沢山ある。
1)お得な学割周遊券
学生は夏休みなどの長期休暇がある。電車は乗客の多い少ないにかかわらず動かさないといけない。そこでJRは、普段より3割安い値段で周遊券を発売している。←JRの親心と思っていた? 甘くないよ、世の中は!
2)昔のモーニングコーヒー
 昔の喫茶店は10時が開店であった。だいたいパチンコ屋と同じ時間帯である。賢い店長は考えた。朝の時間だけ、モーニングサービスと称して安くすればお客もくるだろう。これが大ヒットしてしまった。今では、損益分岐点分析の考え方ではなく、れっきとした営業時間としてのサービスになってしまった。
3)バーゲンセール、八百屋の刺身叩き売り
 これは、損益分岐点分析ではありません。捨てるなら利益を削ってでも売った方が得という考え方です。ある意味、誰でも考えることです。

これで科目の勉強は終わりです。