会長の”質問魔”と呼ばれて(その3 電子デバイス)

電気工学を学ぶ人間には2つのタイプがあると思う。数学や物理現象を考えるのが好きなタイプと、片やラジオをつくるとか、スピーカで良い音がするまで熱中するタイプである。私は前者だった。おかげで?卒研は、高専の時がプログラミングで、大学は自動制御という非電気だった。情けない話だが、トランジスタを見てもPNPとNPNの区別がつかなかった。電気の卒業生としては恥ずかしい限りだ。どうやら「理解できないと納得がいかないタイプ」のようだ。ただ50歳になった最近は少し違う。
「今は理解できなくても、使うこと・慣れることが理解につながる」
と思うようになった。年を取ったこともあるが、3年間のアメリカ赴任経験が大きい。「英語の勉強はまず文法から」と学生の時は思っていたが、実際に生活してみると「まず使ってみることが上達の第1歩」であった。もっと早く気づいていれば違う人生があったかもしれない。
話は長くなったが、さっぱり分からないトランジスタの中身を教えてくれるため、喜んで受けた。
(上記が教科書 薄いが中身は濃かった。)


授業は4年後期にあった。後期といえば卒研に精を出すタイミングであったが、授業が面白くて夢中になって勉強した。K先生という温厚な方で、私の素朴な疑問から数式の質問まで懇切丁寧に答えてくれた。200頁弱の薄い本だったので、3ヶ月もあれば完全読破できると踏んでいたが、奥深く入り込んでしまい出口が遠くなってしまった。『トンネル効果とpn接合』で止まってしまった。電気というよりも物理現象である。年が明けて愛知に帰る日が近くなって来た。卒研もそっちのけで勉強していたので担当の先生から叱られたが、構わずに質問を続けた。徐々に理解できていくので楽して仕方なかった。この疑問が解決できればトランジスタが理解でき、そしてラジオ作りも始まるかなと。。。
しかし、教科書の半分を理解したところで卒業となってしまった。残念だった。せめて3年の時に受講していれば良かった。。。
K先生は「残りは愛知から質問表として郵送してください。」と言ってくれた。好意に甘えて2度程郵送したが、その後途絶えてしまった。会社に入れば新しい生活が始まるし、やはり質問(疑問)は1対1がベストだ。
あれから30年経ったが、今でも中途半端で終わってしまった無念さを思い出すことがある。


(いつもの様に 理解した内容を記載していた。)