2019-01-03 高専教育の発見
M5 上村
走り初め後の、茶話会でお話しした本の紹介です。
「高専教育の発見」(矢野眞和、濱中義隆、浅野敬一 編、岩波書店)
全国13高専の、1976年3月〜2008年3月までの卒業生12,600 名の
郵送によるアンケート調査結果の回答 3,408 件を統計解析
(多変量解析、重回帰分析と思われます)した結果と解説です。
高専教育のアウトプットは職業生活上のアウトカムに密接に結びつく。
「高専教育は仕事の役に立つ」
① 所得
高専卒と大卒との差はほとんどない。私立大卒と比べればやや上位。
高専卒の学生の質が均質で大企業への就職率が高いことが、学生の
質が拡散している大学と平均すればほとんど変わらない結果になっている。
高専在籍時の学業成績は、所得を有意に向上させるが、職位や
仕事満足度とは関係がない。
企業規模の大きさ、専門分野と仕事内容との関連の深さが有意。
② 職位
卒業時汎用能力と友人関係満足度が有意、学業成績は関係なし。
卒業時汎用能力
・自分の手を動かす実験などから問題の本質をつかむ力。
・自分自身で考えながらものづくりをする力
・他の人と協働する力。
・新たなアイディアや解決策を見つけ出す力。
・プレゼンテーション能力。
③ 仕事満足度
卒業時汎用能力と友人関係満足度が有意、学業成績は関係なし。
職位が課長以上又は自営業であること、専門分野と現職が密接な
関係にあることが有意。
④ 初職が開発・設計の技術職の割合は低下傾向、開発・設計部門を
目指すなら、専攻科卒が有利。
⑤ 仕事に対し高い興味を維持するためには、読書と学びの習慣が必要。
⑥ 高専教育に不足しているのは、英語を含めた語学力と
プレゼンテーション能力。
私見ですが、長年自動車の内装部品の設計をした経験からは、
音楽・美術といった芸術・情緒関連の素養が人が目で見て
直接触れる物を作る上で必要だと思います。