(長坂) プラス1 イイ山とは



  40年も山登りをしていると、“イイ山”と“そうでない山”は明確に分かれる。私の中のイイ山は

1) 姿・形がカッコイイ(遠くから見て登りたくなる)
2) 登っていると感じる(変化あり、ドラマあり)
3) 頂上が頂上らしい。
4) 天気に恵まれる。(悪天候はどうしてもマイナス)


上記を満たす山の1つが剣岳である(写真上)。ここは2000年8月に登頂したが、まさしく“イイ山”だった。語ると長くなるが、一般的なルートは室堂(観光地)から入り、一服剣(いっぷくつるぎ)⇒前剣岳(通称:ぜんけん)⇒剣岳(本峰)とアプローチしていく。業界雑誌には、
「一般登山者が登る山のうちでは,危険度の最も高い山」



と呼ばれているが、当時も?山を甘く(軽く)考えていた私は、翌日早く帰りたい一心で、予定を前倒して頂上を目指した。ところが、視界が悪い中を頂上だと信じて登った場所が、実は本峰ではなく“前剣”だった。目の前に、とてつもなく雄大で、恐ろしい形をした本峰が姿を見せ、私に向かって
“山をナメルナ! 出直して来い!”

と語ったように思えた。私は、TVドラマなどで“腰を抜かしてひっくり返る格好”となり、恐怖で体が震えたのを今でも覚えている。
〜写真の左ピークが前剣。右奥が本峰。前剣⇒本峰は、“カニの縦バイ(登山者が両手両足を使い、鎖を頼りに列をなして登っていく姿がカニに似ている)という難所を通過しなければならない。約80分コース)〜

 
  結局、その日は山小屋に引き返し、翌朝2時半に起きて頂上を目指した。尖って見える山頂も20名程度は座れるスペースがあり、見晴しは抜群であった。

 実にイイ山だった。


続く