OB会長の歴史探訪(動機編)

高校世界史 探訪(その1)
〜やっとスタートラインに立ち、そして走り始めた〜



 世界史に興味をもったのは、いつごろだろうか。歴史自体は、中学の頃好きなジャンルであったが、それは日本史であり、しかも「戦国時代の国取り」に異常な関心を覚えていたことくらいだ。むしろ世界史は嫌いであった。勉強していると、人名と都市名の区別がつかなかったり、中国と思えばヨーロッパだったりと話が飛んでしまうのも嫌だった。そういえば、高専を卒業して編入した千葉大学において、「産業革命論」なる講義を取ったが、正直理解できなかった。楽しかったことといえば、文系科目なので、文学部や経済の女性とお友達になれたことくらい。(不純な動機ではありません!?)
そんな私をその気にさせたのは、やはり3年間のアメリカ赴任(2005/4〜2008/4)だと思う。アメリカに行って思ったことは、
国際人として必要なのは、右手に英語、左手に世界史。
アメリカ人と話をする中で、アメリカ(自国)の歴史を喋ると、褒められたり親密感を持たれたのは確かだ。赴任中はとにかく、沢山の本を買った。印象に残っているのは日韓中共同製作の歴史本。これは、自国の歴史、特に日本が朝鮮・中国を侵略した事実について、日本を徹底して悪者として描いていた。日本人が書くもの(日本史の中での侵略)との違いに驚くばかりだった。また、アメリカの小学生が学ぶ自国の歴史は大変参考になった。英語に対して、日本語訳が隣に書かれており、当初は英語の勉強も兼ねて購入したが、結局、日本語訳だけ読んだ。おかげで、地名の由来が分かった。ミシシッピィ川をフランス人が発見したため、その付近の知名はフランス流である。Chicagoは本来ならば“チカゴ”だが、フランス語なので“シカゴ”だったり、“セントルイス”は聖なる“ルイ14世”、ルイビルは“ルイの村“だったりと、時々出かける街なので身近に感じた。ただし、興味を覚えたが、歴史の勉強という面で満足のいくものではなかった。

一方で、「映画でみるアメリカの歴史」なる本を買った。私は映画には全くと言って良いほど興味が無い。テレビのように途中宣伝もなく、休憩もないため息が詰まってしまう。暗いところで見ると寂しくなる。。。などなど。理由はいろいろある。妻は逆に大好きだ。古いものから最近のものまで良く知っている。映画が共通の趣味でないのは残念だが仕方ない。ただし、せっかくアメリカ赴任して、しかも単身なので時間もある。これをチャンスに「勉強」のつもりで映画を知ろうと思った。上記の本に出てくる映画はすべて古いものであり、日本の本屋で500円DVDを買って、出張中の飛行機で見た。今までに、あの有名な“風と共に去りぬ”、“ティファニーで朝食を”も見ていなかった。恥ずかしい話だが、50歳にして初めて知った名作中の名作だ。

 これらの映画から、その時代背景である歴史(“風と共に去りぬ”なら南北戦争)を知ろうとしたが、正直理解できなかった。結局、ヨーロッパ物も含めて50本くらい見た。因みに、一番良かったのは“ローマの休日”だった。(まさか、この2年後にローマを訪れるとは予想もしなかったが。。。)
 アメリカ赴任して世界史の勉強に目覚めたつもりでいたが、何一つものにならなかった。結局、消化不良を引きずって、2008年4月帰国した。

 そんな私に転機が訪れたのは、会社の永年勤続旅行でイタリア(ヴェネツィアフィレンツェ、ローマ)、そしてパリに行くことになったのだ。こうなると、歴史を知っているか否かが、同じ建物や、美術館を見ても感動が違うというもの。眠っていたと言うか、諦めていた勉強ごころ(知りたいという単純な気持ち)が、頭を持ち上げた。おまけに期限付きである。(2008年9月26日出発)。元来は怠け者の私であるが、期限を切られると俄然やる気が出る。(金が掛かると、やる気が出るタイプと似ている)。すぐさま本を探すことになるのだが、ある時、高校生の息子の部屋にある世界史の本(教科書、地図帳、問題集、学校の試験問題)を見たとき、これは面白いと感じた。考えてみれば、それまでの私は大人対象の歴史本が主体であった。これは勉強というよりは、知識というか、読んで楽しむもの。そして、学生時代に一通り世界史の勉強をした人間を対象としていた。だから、理系出身で、しかも高校で基礎を勉強していない私には理解できなかったのだ。おまけに値段が高い。それからというもの、今まで本屋の一般コーナーから、“高校参考書”、“大学受験”コーナーに探す場所を変更した。発想の転換である。
1冊1冊読みながらニコニコしている私を見て、高校生は、“変なオジサン”か“この人、頭おかしいんじゃないの”と思ったに違いない。
いいんだ! 俺は高校世界史の本を読んでいると楽しいんだ! 
文句あるか!
やがて、目から鱗のテキストに出会った。それは、
「New 青木 世界史B講義の実況中継①〜⑤」 語学春秋社
すぐさま購入した勉強を始めることになった。
高校世界史 探訪  の始まりである。

つづく