“いまどき”の大学受験(最終章)                                                                      賽(サイ)は投げられた   その6

 今日は名大の合格発表があった。明日は京大、明後日は東大と大学受験大詰めである。週刊誌には、手を変え品を変え受験の記事が載っている。また、予備校は今が学生獲得の真っ最中である。1年が終わり、新たな1年が始まる。時は止まることはない。
 息子の受験に関して、昨年の感動・一昨年の無念さが甦ってくる。受験はスポーツと同様ドラマなのだ。


その6 弟(次男)に譲ってやりたい早稲田大学

2月26日(土)
 慶応大学の合格から一夜明け、今日は早稲田大学合格発表の日、そして京大試験2日目である。会社が休みなので、ゆっくりとした一日が始まった。早稲田も合格したら、どうしよう。1校しか行けないが、できるものなら合格して欲しい。そして、
“慶応でなく早稲田に入学金を払い、京大の合否を待つ”

これが私の本心であった。なぜかと言えば、千葉大学の学生だった時に同級生からよく、
「慶応も受かったが千葉大に来た。」
「早稲田は落ちた。」

と聞かされていた。だから慶応合格で終わりなら、
「私の方が賢い?!」

訳で、早稲田に受かって始めて親を超えるのである。それに、早稲田といえば箱根駅伝を始め、ラグビー早明戦・野球の早慶戦など私学No.1だ。おまけに、スマート(都会的)な慶応に対し、蛮カラ(田舎モノ)が私は好きだ。

 11時頃、郵便配達の人が速達を持ってきた。早稲田大学と封筒には書いてある。
「ひょっとして。。」
 中身を見ると、案の上「合格証明書」が入っていた。
「すごいなぁ、アイツは」

この一言だけで、後が続かない。嬉しくないと言えば嘘になるが、少なくとも、早慶のどちらかは辞退しないといけない。実にもったいない。
「できるものなら、弟(次男)に譲ってやりたい。」

これが本音である。
 封筒に中には、学生寮の案内・入学手続きの手引き・奨学金情報など、沢山の冊子が同封されていた。圧巻だったのは、合格証明書の下半分が入学金・授業料振込み用紙となっていたこと(写真下の緑色部分)。前回の慶応が「おめでとうございます。。。」という額に飾れる合格通知書だったのに比べ、なんとも対照的である。

 夢だと思っていたが、早慶ダブル合格となってしまった。妻と話した会話は
 (私)「これって夢じゃないよな。本当だよな。」
 (妻)「ほんとだね」
 (私)「だけど、もったいなよな」
 (妻)「ほんとだね」

 やがて、夜になり息子が京大受験を終えて帰ってきた。私は玄関で出迎えた。
      ・・・・
 (私)  「ご苦労さん。ところで、早稲田も慶応も合格したぞ」
 (息子) 「えっ、マジで。。。」  
少し微笑んだだけで、それ以上何も言わなかった。私には、あの時の息子の笑顔が忘れられない。


早慶の選択)
 現実となってしまった以上、どちらかに決めないといけない。生涯で数少ない(初めてかな?)贅沢な悩みをもつことになった。入学金振込み期限は3月3日である。


2月27日(日)
 早速、親子の会話は始まった。
(私)  お前は早稲田か慶応にどちらにするんだ。
(息子) 俺は、慶応がいいな。日吉は田舎だし、俺には合っている。
(私)  まぁ、そうかも知れんが、早稲田の方が有名だぞ。
(息子)  そうかなぁ。

 2月16日の試験が終わった後で話した内容と、同じである。結局、予備校などの関係者に聞いてから決めようということになった。
このわずか4日ほどの短い期間が、受験の中で最高に幸せだった。なぜなら、お金は払ってないが選択権はある。京大の発表はこれからだ。現実ではあるが、「夢の世界」なのだ。
「明日よ来るな。時間よ止まれ」

 こうお願いして、床についたのを覚えている。

さて、息子は早慶の比較を駿台予備校や刈高の担任や先輩に聞いたようだ。私は私で、次男(弟)の河合塾担任のYさんに相談した。結局のところ、得た結果は同じ。
 「早稲田と慶応に差はない」

そして、この時分かったのは、予備校はあくまで受験のプロであるが、大学の学部や学科まして卒業後の進路(就職)については情報を持ってないことだった。
さて早慶が同じレベルとなると、私の情報や想いなど説得力はなくなる。ただの願望だ。まして、頑張って合格を勝ち取ったのは息子なのだ。
 (私)  「父さんは、どちらでも良い。お前が決めて、お前が金を払ってこい。」
 (息子) 「えっ、俺が。。。20万円も持って」
 (私)  「そうだ、それくらいできるだろう。」
 (息子) 「わかった。」
 (私)  「それと、九大は受けなくても父さんは良いからな。」

 (息子) 「えっ、国立は安いから行って欲しかったんじゃないの」
 (私)  「同志社なら、そう言うが、なんたって早慶だ。行きたいなら金は出してやる。」
 (息子) 「わかった。」

こうして、私は息子に印籠を渡した。一方で息子は、その後も本当に慶応で言いか友達に確認したらしいが、結局入学金20万円を慶応へ払った。最終的に京大が受かったので、両方とも辞退するという、バチが当たりそうな話しである。私の中では、
・慶応は20万円払ったのだから、ある意味“手切れ金”と考えて納得がいく。
・早稲田はマグレ?で受かって、そのまま辞退したので申し訳ない気持ちと未練で一杯。
 かくなる上は、次男(弟)に早稲田を受けさせ、できるものなら。。。。現在高校2年生だが、今から話をしている。
 「とにかく、早稲田は受けるように!」
次男は「受かる訳ないだろう」と言っているが、少しはやる気もあるようだ。


こうして、早慶の受験は幕を下ろしたのである。
                    続く



プラス1 早稲田合格に寄せて

慶応に続いて早稲田の合格褒美5万円も確定した。いや“してしまった”と言うのが正直なところである。都合10万円の出費となったが、“有難いこと”と感謝した。写真の下にある小さな文字は
「ご苦労さん 早慶ダブルおめでとう!!」

と書いてある。
 

プラス2 鎌田総長メッセージ(抜粋)
 早稲田大学は、2007年の創立125周年を「第二の建学」と位置づけて、さまざまな改革に取り組んできました。・・・
 多くの人にとっては、学生時代は自分のやりたいことが社会的制約などを意識しないでできる最後の期間になるはずです。私も、一時期、学生劇団に所属して、ほとんどの時間をサークル活動に費やしたという経験があります。皆さんも学生時代の限られた時間と人間関係を大切にして、本来の勉強のほかに、この時期にしかできないことに精一杯挑戦してほしいと思います。
 早稲田大学の一番の魅力は「多様性」です。多彩な教員、世界中から集まる留学生、個性あふれる学生など、さまざまな文化的背景や価値観をもった人たちがぶつかりあい、切磋琢磨する環境の中で自らを磨くことによって、人間の幅が飛躍的に広がってきます。もう一つの大きな特色は「自由」です。・・
 ぜひ、皆さんが、旺盛な好奇心をもって入学し、勉強をはじめとしたさまざまなことに主体的かつ積極的にチャレンジし、世界に羽ばたいていくことを期待しています。


プラス3 理工学部の学科と定員

学部名 学科名 定員
基幹理工 数学科 一括募集
(全315名) 応用物理学科
情報理工学科
機械学科
電子光システム学科
表現工学科
創造理工 建築学 100
総合機械工学科 70
経営システム工学科 70
社会環境工学 50
環境資源工学科 35
先進理工 物理学科 30
応用物理学科 55
化学・生命化学科 35
応用化学科 75
生命医学学科 30
電気・情報生命工学科 75

表が理工学部の学科である。慶応の学問1〜5に対し、基幹理工・創造理工・先進理工の3つに分かれている。夫々のキャッチフレーズは以下である。

   基幹理工・・次代の基幹となる科学技術の創出
   創造理工・・科学技術の観点で社会問題を解決 
   先進理工・・最先端のテーマに果敢に取り組む

 慶応の管理工学科と同様、早稲田にも経営システム工学科という、“経営を理系の立場から学ぶ”学科がある。例えば生産管理・人間工学・・と言った類である。
 偏差値で最も高いのは、生命医学工学科の66であり東大に匹敵する。医学の冠は偉大である。なお、最近は“土木”という言葉はイメージに合わないのか? “環境”に変わっている。
2010年度は、理工学部の定員合計940名に対し12,529名が受験し13.3倍の倍率であるが、国立大合格への辞退者を考慮し3,381を合格させており、実質倍率は3.6倍である。なお、この中には420名(12%)の女性が含まれている。因みに、息子が合格したのは、基幹理工学部である。