会長の ”東北震災地を訪ねて(後編)”   原発を行く 11

迷い道 2

 この写真は、避難指示区域に指定されている双葉郡 葛尾村(かつらお)付近である。除染作業中の幟でわかるように、原発事故により放射性物質が付着した表土の削り取り、枝葉や落ち葉の除去、建物表面の洗浄等により放射性物質を生活圏から取り除く作業をしている。 取り除いたものは「遮る」と「遠ざける」で対応。 遮る対応としては、土などで覆うこと・放射性物質を土などで覆うこと,すなわち埋めること。遠ざけるとは、人のいない所に保管する。もしくは、人が接する時間を短くするのだ。
原発の最前線がここにもあった。

 
 
  当初の予定では、東北自動車道へ乗継のはずが、途中の三春ICで下車するという表示なっている。
 “やるな、ナビ! 県庁職員よりも賢いぞ。”

そんな優越感?を抱いてICを下車し、画面が示すままに進んでいくと、奇妙な現象が現れた。
「画面が変わるたびに、到着時間が遅くなり距離も長くなっていく。」


 最初は、そんなこともたまにはあるかと笑っていたが、どんどん到着時間が遅くなる。
そして、Oさんから言われた到着時間10時30分を過ぎてしまった。こんなことなら、大回りした方が良いじゃないか。ナビを信じた俺がバカだった。
“どうなってんだ。この阿保ナビ!!”


 後で分かったことだが、ナビは通行止め情報をキャッチして修正するが、その情報は近くにならないと分からないらしい。だから、“最短ルート選択⇔通行止めで修正”の繰り返しとなる。今回、目的地付近に肝心な第1原発があるのだから、ルートとしてはジグザグした経路になる。

 気が付けば、周りは避難指示区域内だった。除染作業中(冒頭紹介)の幟があちこちにあり、沢山の作業員が働いていた。全員がマスクをして放射能をなるべく吸わないようにしているのだ。
 これに対し私はマスクなどせず、あくせくと運転していた。


“あぁー、沢山の放射能を吸ってしまった。”
後の祭りである。


 ナビを諦め、人の情報をたよりに進まないといけない。今さら高速道路に戻る訳にはいかない。仕方がない。。。そう思っていると、ダンプの運転手が車を停めていた。さっそく近寄って聞いた。

(私)   JR小高駅まで行きたいんですが。。
(運転手) そりゃ、大変だ。この辺りは侵入禁止区域の近くだ。
(私)   どうすれば。。
(運転手) もう前には進めないので、とにかく戻ってから大きく迂回しないといけない。
(私)   侵入禁止区域は突破できないのですか。
(運転手) 無理だね。警察の厳重な検問がある。全ての道路に通行止めがある。結局、引き返す羽目になり無駄な時間がかかる。
(私)    分かりました。


 ガックリした。張りつめた緊張が急に抜けてしまった。そして、おもむろに地図を見せると、運転手は侵入禁止区域がどこかを考えているようだった。


(運転手) まずは、国道349号線まで戻らないといけない。ここなら大丈夫だと思う。

(私)   ということは、今まで来た道を大きく引き返す訳ですか。20キロほどある。
(運転手) そうだね。そして115号線にでたら海を目指して東に進むこと。途中、伊達市の交差点を通過できるかは、現地に行かないと分からない。直進できれば早く行ける。


この時点でJR小高駅は時間的に無理かなと思った。
(私)   分かりました。もう一つ聞いていいですか。
(運転手) 何だね。
(私)   どこかトイレはありませんか。この辺はコンビニも全て閉まっている。
(運転手) うーん。この近くに復興作業の詰所がある。そこなら。。
(私)   ありがとうございます。とても助かりました。
(運転手) 気をつけて。。。(福島弁だった)



 因みに、ここは葛尾村という第1原発と同じ双葉郡であった。

まさか、原発最前線の奥地へドライブするとは思わなかった。
凄いところまで来てしまった。


                               続く


プラス1 原発事故について 3 〜朝日新聞より〜

 3月11日午後3時42分 地震発生から56分後に第1原発
「全電源喪失

に陥った。いわゆるブロックアウト原発で最も恐れられている事態である。これによって、原子炉を冷やすための緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動しなくなった。
 実は原発とは、それ自体が電気を消費する巨大プラントである。電気が無ければ動かない。そのため、第1原発は各2台ずつ非常用ディーゼル発電機が備えられていた。大きさは鉄道のコンテナほど。仮に1台が故障しても、もう1台があるという安全設計のはずだった。
ところが、これが全て止まり、ECCSも不作動に。緊急時に圧力容器内へ強制的に水を注入して冷却するECCSが作動しなかったことで、原子炉は深刻な状況へと突入していく。
次のような経路だ。
1) ECCSが不作動
2) 圧力容器内の温度が上昇
3) 冷却水が蒸発
4) 燃料棒の一部が水面に露出
5) 燃料被覆管が水蒸気と化学反応
この結果、燃焼性のある大量の水素が発生した。水素は軽いため僅かな隙間からスルスルと抜けていき、原子炉建屋の上部にたまり、やがて破局を迎えた。
 “水素爆発”