会長の ”東北震災地を訪ねて”   津波の爪跡 9

大船渡 2

 朝5時15分に目覚ましを掛けたが、疲れたせいか目が覚めない。
”頑張って起きろ、大船渡の魚市場を見学するんだ”
 誰かが、そう言った気がした。
“しょうがないな。行ってみるか。”

6時から始まるというセリには多くの仲買人がいる。いろいろな魚が箱に入れられていた。港には帰ったばかりのサバ漁船から、あふれんばかりのサバが水揚げされていた。
 活気がある。

撮影で仕事に支障をきたせてはいけないと思い、確認したいところ全く問題なし。

勢い余って陣取る鳥たちの縄張り争いまで撮影した。ご覧の通り、カラスが魚の淹れるケース全体を囲み、カモメがその下にいた。おこぼれ頂戴と言ったところかもしれない。
“鳥たちは津波があったことを知っているのだろうか。”


 
漁業関係者の中には、”がんばろう。。。”と書かれた服を着ている人もいた。皆、それぞれの背中に辛さを背負っているように思えた。
“人間悲しんでいても始まらない。何かを始めないと!”

ホテルに戻り朝食を食べた。簡単(質素)なものだったがホテルで作ったらしい。このホテルも、どんどん栄えて欲しいと思う。


今日の旅程は盛り沢山。
7時30分出発 まず出かけたのは、大船渡湾の対岸にある”平洋セメント” ここは瓦礫の処理をしているらしいが、外からでは全く分からなかった。
 次に、大船渡の復興シンボルとなっているJR盛駅(サカリ)に向かった。ここは、JR大船渡線三陸鉄道の南三陸線の合流駅。待合室には高田純二、篠山紀信。。。。などの芸能人やスポーツ選手の色紙が飾ってあった。有名人が来ると元気になる気がした。
この駅からNHK大河ドラマあまちゃん”で放映されていた電車が走っている。駅員さんも慣れたもので、
“もうすぐ電車が来ますから、ホームへ行って見てください”
と親切にアドバイスしてくれた。そして乗客(ほとんどが観光)が電車に乗り込んだ。
“観光客が金を落としている。”


皆が潤うなら結構なことだ。私もゆっくり電車に乗って眺めたかったが、先を急ぐことにした。大船渡にも川があり、津波が駆け上がってきた爪跡が見えた。人間が築いた家屋や車は瓦礫となり、自然が作った草木はすべて流された。瓦礫はおそらく“太平洋セメント”で処理されるのだろう。そして、大地には新しい草木が生える。これぞ自然の恵みである。
 緑は良い。
 
何もない荒野だったら心が折れてしまう。

昨日は、見るもの・聞くものにショックだったが、そんな風景に慣れてきたせいか少し余裕ができたかもしれない。


大船渡を後に釜石に向かった。

続く