会長の “夏だから。。。”

夏山2013  6


午前5時 朝食の準備が整ったと放送が入った。山の朝は早い。この時間には御来光を見るために、また縦走として出発している登山者も大勢いる。我々も、私が病気でなければ間ノ岳を目指して歩いている時間だった。
私はS君に深夜の出来事を全て話し,コース変更して北岳経由で帰ろうと言った。そしてまた眠った。(写真は北岳)

朝7時だった。ぐっすり眠ったようだ。周りに登山者はほとんどいない。

私が診療所に行ったことはS君から妻に伝ったようだ。


(妻)   北岳も止めて下山したらどう。
(S君)  そうだよ。無理することはない。
(私)   もう大丈夫だ。すっかり元気になった。
(妻)   本当? また頭が痛いと言ったって医者はいないのよ。
(S君)  俺もそう思う。昨年、突然歩けなくなった実績があるしなぁ。
〜昨年ジャンダルム登頂の帰路、突然体が動かなくなり30分の距離を2時間以上もかかった苦い経験があった〜

(私)  心配ない。北岳はここから1時間だし、あとは下りだ。さぁ行こう。

 2人が心配してくれることは良く分かったが、元気になったことが50%、このままじゃ帰れないことが50%(意地)だった。

 
結局、私のワガママを通して北岳を目指した。この日も天候に恵まれたお蔭で富士山の眺めは素晴らしかった。
“日本で二番目に高い山から富士山を眺める。”


この目標が達成している瞬間だった。それにしても南アルプスは山が深い。幾重にも山脈が連なっている。北アルプスとは違った風景だった。
(写真は北岳付近から見た富士山)

午前9時 念願の頂上に到着した。頂上は沢山の登山者で賑わっていた。みんな嬉しそうだ。口癖のように
「日本で2番目に高い山に登ったぞ!」

初日でバテテいた妻も元気百倍と言った感じである。もちろん私も深夜の一件が嘘のように平常に戻っていた。(写真は北岳頂上にて 3,193m)

そして下山となった。登りに比べれば苦しさは無い。しかし、山登りは下りで決まるというほどに大変である。登りは気力と体力さえあれば誰でも登れるが、下りは技術の差がでる。何よりも危険である。以前、一年の1/3を山で過ごすというサラリーマンと歩いたことがある。登りは標準時間よりも遅く牛のようにスローに、されど休まず歩いていたが、下りは30分の道のりを僅か5分で降りた。蛙が石の上を飛ぶように掛けて行った。衝撃的だった。

 

 実は心配ごとがあった。登山口の最終バス16時30分に乗り遅れると足止めを食い、何もないところで一夜を過ごすことになる。間に合えば温泉が待っている。この話をすると妻の態度が変わった。“温泉に入って美味しいものを食べたいという願望”が、疲れていた妻に刺激を与えたのもしれない。
(写真は芦安温泉)

そして、何と下りは標準時間通りに歩くことができたのだ。
人間 気の持ちかた次第だな。

つくづく思った。

   続く