会長の “夏だから。。。”

夏山2013  5

 山登りをする時期としては会社の盆休み連休前半と決めている。理由は
1) 梅雨明けから盆までが一番天気が安定している。
2) 登山客で賑わうので何かあったら人に助けてもらえる。

若いころは9月中旬〜下旬だった。この時期は紅葉が素晴らしい。そして雪が降ることもある。これがまた美しい。しかし今は。。。。つくづく歳をとったものだと思う。
(写真は紅葉風景  自然の成せる技なので中々出くわすことができないが。。)


 さて、頂上を断念し北岳山荘小屋を目指した。1時間で到着したが既に17時を過ぎており遅い到着だった。屋根裏部屋だったがスペースはかなりある。 (写真は小屋と頂上)
『以前 槍ヶ岳山頂小屋に宿泊した時は畳一枚に2名で寝たこともある。聞いた話だが3人もあるという。その場合は向きを交互にして寝る。そのため、長さは2メートルとちょっと長くなっている。そうでないと足が臭い。逆に同じ方向だと動けない。90センチに3人では顔を横にできないのだ。
 なぜ、こんなに詰め込むか。満室で宿泊を断れば登山者は外で寝るしかなく、死んでしまう可能性がある。山小屋は必ず宿泊できる。これだけは事実である。』
 
3人とも疲れていたので夕食後すぐ眠りについた。消灯は20時であるが19時30分には寝た。
 一眠りして目が覚めた。暑かった。だいたい山小屋の寝室は強烈なイビキが聞こえる。疲れているから仕方ないが、神経が太くないと眠れない。しかしこの夜は不思議だった。全くイビキが聞こえないではないか。皆どうしてしまったのか。起きているのか寝ているのか。
S君に向かって小声で
「ちょっと暑いので、窓を開けて欲しい」
「わかった。俺も暑い。」

しかし一向に眠れない。頭が痛くなってきた。腹痛もある。トイレに行って玄関近くの長椅子で横になっていたが眠れない。頭がどんどん痛くなって眠れるどころではない。どうなってしまうのだろう。
 そういえば、外に診療所があったことを思い出した。昭和大学医学部がボランティアで開設しているらしい。お世話になろうか。。。
 以前 日曜劇場(テレビ) “天空の診療所”に興味を持って見ていたが、まさか自分が世話になろうとは。。。登山歴40年で初めてだ。


 午前2時過ぎに診療所をノックした。出てきたのは学生のようだ。
(私) 頭が痛くて寝てられないので診察してほしい。
    〜倒れ込むように横になった。不安でいっぱいであった。〜
(学生) 分かりました。先生を呼ぶ前に症状を聞かせてください。熱・脈拍などを調べ問診した。
(私)  大丈夫でしょうか。
(学生) それは医師に聞かないと何とも言えません。
    〜これが不安に拍車を掛けた。ひょっとして下界までヘリで行くのだろうか。。。膨大な費用がかかるかな。。〜

やがて5分くらいして先生が出来てきた。学生からのカルテを見ながら私に言った。
(先生)  頭痛と腹痛の薬を飲んでください。
(私)   えっ。。薬を飲むだけで大丈夫ですか。病気はなんですか。
(先生)  たぶん熱中症です。薬が30分くらいで効いてきます。
(私)   できれば、ここで朝まで眠らせてください。
(先生)  大丈夫です。部屋で寝てください。
     〜まさか熱中症とは思わなかった。安心と疑問が入り混じった。〜
(私)  てっきり酸欠かと思ってました。だいたい山小屋はイビキがうるさいのですが今日は全く聞こえない。これは異常です。皆 酸欠状態では。。。
(先生) 多少はあるかも知れませんが薬が効いてくるので大丈夫です。

 〜 先生は診療所で寝ることにOKは出さず、とにかく部屋で寝て大丈夫と言い続けた。〜
 (学生) ところで、明日の予定は。
(私)   本当は白根三山を縦走する予定でしたが断念しました。早朝 間ノ岳をピストンして北岳を登って帰る予定でしたが、間ノ岳も止めて北岳を登って帰ります。
(学生)  そうですか。無理をしないでください。
(私)   えぇ。。 また来年登りに来ます。

  こう言うと学生は笑顔になった。医者サイドから止めろとは言えないのだろう。


 そして、先生の言うがまま部屋に戻り眠った。
(写真中央が間ノ岳   日本で4番目に高い)

                続く