会長の”ロシアの魅力”                                                     その5:田舎(日常の風景)  後

 ロシア正教会
 この写真はモスクワから170キロにある街ウラジーミルのウスペンスキー大聖堂である。正教会の1つであるロシア教会はこのような建物が一般的で、一見するとイスラム教寺院を想像させる。宗教の話しになるが、キリスト教にはカトリックプロテスタント・そして正教会があり、ビザンツ帝国(現在のトルコ周辺)から生まれた正教会は中東に近いことからイスラム建築の影響を強く受けている。ヨーロッパ風の建物の中にあって一際めだっている。 
旅行における見所の1つは中世に栄えた古都めぐりで、その中心は教会だが、さすがに世界遺産だけあってユニークで見ごたえのあるものばかりだった。
 写真中左:ワシリー寺院。右:セルギエフ大修道院



教会内にあるイコン(肖像画
 写真はモスクワから70キロに位置するセルギエフ・サポートにあるトロツキー聖堂の内部である。キリスト教というと十字架を連想させるが、正教会はイコンと呼ばれる肖像画がメインである。古いイコンは歴史を感じさせ見ごたえがある。ロシアは農奴制(農民奴隷)が昔から確立していたため、貧富の差が大きく農奴は貧しかった。彼らは休みに教会に行き、お祈りを捧げることが楽しみだったのだろう。我々が見学した際も、信者が熱心にお祈りを捧げていた。
一方で裕福な方(貴族)は、前述のような豪華な宮殿を建造し優雅に暮らしていた。歴史が証明する通り、後世に残る建物は一人の贅沢極まりのない人間が作り出している。ベルサイユ宮殿(ルイ14世)・タージマハル(シャー・ジャハーン)、そしてロシアの宮殿などであるが、支配する者と、される者がいつも存在するのが世の常なのかもしれない。
                                       続く


ロシア文学を紹介する。
 ロシア人は洞察力があるのか、はたまた冬が厳しいため家にこもり熱心に執筆活動したのか。。。。いずれにしても「よくもまぁ、ここまで人間の本質を語れるものだ」と関心する。以下にロシア2大文豪(トルストイドストエフスキー)の一端を述べる。その多くは1870〜90に発表されたが、この時期といえば、ロマノフ王朝による弾圧から逃れる手段として文学に活路を見出した頃である。日本も明治維新による新しい国作りをしている時期である。因みに森鴎外の「舞姫」は1890年に書かれている。


トルストイ戦争と平和
ナポレオン戦争を舞台にした物語で、クトゥーゾフ将軍の銅像サンクトペテルブルク(カザン聖堂)にある。私が印象に残っている言葉は下記です。
「幸福になるとは、皆が羨むことを実現することだと思っていたが、そうではないようだ。」

一方、彼には、「アンナ・カレーニナという男女の“愛”についての小説がある。同じ人間が書いたとは思えない?素晴らしい作品と評されていて、革命家レーニンは、本が擦り切れるまで読んだという逸話が残っている。主人公アンナが言う有名な言葉。

「私に大切なのは唯一つ、あなたの愛があればそれでいいの」
正直、私にとっては怖い作品だ。


ドストエフスキー罪と罰
 トルストイが貴族を中心とした内容であるのに対し、こちらは一般民衆を描いている。個人的には、トルストイよりも人間の本質を語る表現は高いと思う。この作品は、主人公(ラスコリニコフ)が、自分の正義に基づいて殺人を犯すが、良心の呵責に悩む物語である。
同著カラマーゾフの兄弟もそうであるが、ロシアの流刑地はシベリアと相場が決まっている。それだけ遠方で寒いのだろう。両作品に共通するのは、

「愛があれば、犯した罪を償うこと(流刑地)も、人生をやり直すこともできる」

年を取ってから読む方が、理解が深まり味わいを感じることができるかもしれない。