西日本地区高専駅伝競走大会報告( 初優勝 )  OB犬塚

12月25日、世間では全国高校駅伝で盛り上がっていましたが、
わが豊田高専は西日本地区高専駅伝競走大会に出場し、
駅伝の部(7区間42.195km)においては2時間15分37秒で
見事初優勝することができ、2位徳山高専に1分17秒の差をつけました。
http://y-page.y.kumamoto-nct.ac.jp/ekiden/index.html

区間賞は以下の3名が獲得しました。
3区(8km) 5C澤 洸太 24分46秒
5区(8km) 5I伊藤兼梧 25分46秒
6区(5km) 2I筒井智哉 16分32秒

さらに、Aクラス躍進賞(昨年大会1〜9位のチームで最もタイムを短縮したチーム)の受賞(豊田は昨年2位)、最優秀選手賞に5C澤洸太が選ばれました。

そして、ロードレースの部においては
男子(3km) 第3位 3MM黒胗賢人(9分38秒)
女子(3km) 第4位 2M樋田美桜(11分13秒)

レース展開など詳細は以下の通りです。

 20回までの大会で優勝経験校は佐世保、徳山(共に9回)、鹿児島、呉(共に1回)の4校しかない。
豊田は2007年から出場し、ようやく一昨年から2位が2回続いたものの、徳山の壁は高い(一昨年4分差、昨年2分差)。
ただ、着実に差を詰めてこられた。そして今回、その壁を壊すチャンスがやってきた。
豊田は澤洸太(5C)、久田淳司(3E)の5000m14分台ランナーの2枚看板に、伊藤兼梧(5I)、吉村泰希(3M)の中堅、
成長著しい筒井智哉(2I)に中距離の小久保祐哉(2E)、鈴木琉世(2M)の7名で臨む。
特に14分台2名の存在は大きく、各校の戦力分析をすれば優勝候補の一つにあげられた。
そして、徳山も14分台の選手1名に7名のチーム総合力で考えれば、優勝しても当然の戦力はある。
さらに、岐阜も14分台の選手はいないものの、総合力では負ける可能性はある。
区間距離は1区から10㌔、3㌔、8キロ、3㌔、8キロ、5㌔、5.195㌔。
豊田の作戦は駅伝のセオリーである、先行逃げ切りでためた貯金を後半まで食いつなぐ作戦であった。

 駅伝の前に3㌔のロードレースが行われた。今回駅伝に出場できなかった学生が走る。
そのためこのレースでは各校の層の厚さがわかる。案の定、上位には5人の徳山の選手が占めたが、
そこに豊田の黒胗賢人(3M)が3位に食い込む健闘を見せた。
さらには女子でも樋田美桜(2M)が4位に食い込み、来シーズンでの全国高専での3位入賞が期待できる。

 そして、10時半、駅伝がスタート。この区間はいわゆるエース区間。豊田は久田で先行逃げ切りを狙う。
彼は今年の全国高専で5000m2位、そして、11月の記録会では14分59秒10をマークし(豊田高専3人目の14分台)、
この1ヶ月調子が上がってきている。他校には今年全国高専5000mで優勝した岩崎(熊本・八代)、
一昨年全国高専1500、5000優勝の富田(徳山)が出走している。レースは始めからスローペースで前述の3名の他にも多くの
選手で先頭集団がつくられ、5kmの通過が16分07秒で実力からしたら明らかにスローだった。しかし、ここからレースが動く。
岩崎がペースアップして、先頭集団が崩れる。それに対応できたのが久田、富田であったが6.7kmあたりでは30mの差がつき、
さらに数十m後ろに富田が追う。その後、富田は徐々に離されていく。久田は苦悶の表情をして岩崎の表情と比べれば、
離されて当然であったが、執念の走りでしっかり食らいついていた。
結局最後までこの差のまま、2区に10秒差のタスキリレー。この時点でライバル徳山には29秒差、岐阜には2分10秒差をつけ、
徳山との一騎打ちの様相になる。

 2区の小久保は夏に短距離から転向した学生だ。中学時に駅伝を走った経験があり、地道に練習を積み重ね、今回
メンバーの座を勝ち取った。先頭とは10秒差の50メートル程度が1.7kmではその差はわずか。残り1km弱ではついに
先頭に立ち、トップで3区にタスキリレー。しかし、背後から徳山が区間2位の好走で7秒差の2位に猛追してきた。

 3区の澤は久田同様に11月に14分57秒(豊田高専2人目の14分台)をマークし、部員の精神的支えに成長した。この駅伝では
昨年5区で区間賞(区間記録にあと2秒)と、駅伝の走りを熟知している。この区間エントリー選手ではトップの実力なので、ここでの
貯金を大いに期待していた。彼は走前には区間記録を更新すると宣言して4km、5km(15分25秒)通過タイムは宣言通りの
ペースを刻んでいった。その走りは後続との差をどんどんと広げていった。残り1kmで区間新記録まであと3分04秒。更新の可能性は
ある残り時間であったが、残りコースのカーブや起伏を考えると厳しいか。区間記録に4秒遅れてタスキリレー。
この澤の快走で徳山に2分12秒の大きな貯金ができ、戦前予想を大きく上回るものになった。

 4区鈴木は中距離の選手。夏から駅伝選手として長距離の練習を積み、厳しいチーム内競争を勝ち抜いた。大差の1位であるものの、
1位という順位のプレッシャーか当日の暖かさなのか、足取りはやや重そうだった。残り1km付近では大差の徳山が猛追して明らかに
差が縮まったと感じさせる勢いだった。鈴木は1位で5区にタスキリレーをしたが、1分19秒後に2位で徳山がタスキリレー。
豊田がタスキリレーをしたらすぐに徳山がやってきたという感覚で、案の定ここでの徳山の選手は区間新記録の猛追だった。

 5区伊藤は長距離選手であったが、今年は中距離の800mに転向。もともと素質があったのか、800mを1分台をマーク。
全国高専大会でも5位に入賞するほど成長した。その後一時調子を落とすものの、11月頃には復調し、最高学年としての経験もあり、
今回5区をまかせた。1.7km付近での彼の走りは小気味良くてかつての好調時の動きで4km付近では5000mのシーズンペストの
ラップからわずかの遅れで通過し、表情もしっかりしており快走を確認した。一方、後方の徳山は今年全国高専大会5000m8位の
選手で1.7km付近では15秒程度詰められたが、その後は逆に差を広げることができた。ここで、伊藤は見事区間賞を獲得した。
残り2区間で貯金は1分26秒で大崩れしなければ優勝の可能性が出てきた。

 6区2年の筒井は長距離種目で澤、久田に次ぐ3人目の選手であるが、その実力差は大きい。今後彼の成長が望まれているが、
今シーズン5000mで自己ベストを30秒以上更新して実力をつけてきた。戦力分析からすれば、彼が額面通りの走りをすれば
徳山には30秒差を詰められるものの逃げ切れるとの目算なので、後ろを気にせず自分の走りをするようにとの指示を出す。
1.7kmでは後続の徳山に10秒ほど差を詰められていたが、少々突っ込み気味に見えて後半失速した。
結局筒井はほぼ自己ベストの走りで区間賞を獲得。誰もが取れるとは思っていなかった好走で、2位徳山との差は1分38秒に広がった。

 7区アンカーの吉村は昨年この区間区間賞、今年高校駅伝ではアンカーで7人抜きを演じるなど、アンカーに適性を示し、万全を期した。
今シーズンも5000mで自己ベストを出しており、彼が普通に走れば、徳山の選手が5000mを14分台でカバーしなければ抜かされない
差になっている。1.7km付近では少々突っ込み気味の走りでやや不安になったが、後続の徳山の選手もどうような走りでこれ以降は
差が縮まらないようだった。残り1km付近で吉村もほぼ自己ベストのペースできており、この時点で優勝を確信した。

今回豊田で区間賞を得られたのは3名、区間2位、3位がそれぞれ1名ずつだった。
一方、2位の徳山は一昨年7区間中6区間区間賞、昨年5区間区間賞獲得であったが、今年は2区間にとどまった。
他には八代、岐阜が共に1区間での区間賞獲得となった。

結果論で勝因を挙げれば、ほぼ全員がちゃんと走れたことに尽きる。特に10k、8k区間の快走は大きい。
1区の久田は後半の5kを15分20秒でカバー。
3区の澤はほぼ1キロ3分05秒の走り。
5区の伊藤の区間賞。